六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編23】頭毛無い

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「50万も何に使うの?引越しでもすんの?」

私はわざとらしくその理由を尋ねた。

「いや、そういうわけじゃないんスけど……」

「じゃあ何すんの?そんな金」

「いや、ちょっと必要なんスよ……」

その言葉を最後に、堀口はまたしても口を真一文字につぐんでしまった。やはり私には理由を言いたくないのだろう。ということは、やはり千夏さんが――。

言いたくない理由を無理矢理聞いても仕方がないし、聞いたところで50万などという大金を用立ててやることもできない。私も堀口に合わせて口をつぐんだ。

B卓から社長の笑い声が聞こえる。今日は本当に絶好調のようだ。社長のお連れ様はいいとしても、それ以外の客が早々にやめてしまわないか心配だ。社長は無類の麻雀好きなので、少しは客に華を持たせようなどという気は毛頭無いないのだ。ちなみに頭毛もほとんど無い。

「いくらくらいなら貸せるんスか?」

突然、堀口が沈黙を破った。それは、今まで聞いた堀口の言葉の中で最も暗く、重く感じた。

「……いや、申し訳ないけど10万も貸せないよ。持ってないからね、そもそも」

恥ずかしい話だが、これは事実だった。私の銀行口座は『ライズ』の給料が振り込まれた日だけ6桁を超えるのだが、次の日に家賃と光熱費を払うとすぐに5桁に転落してしまう、そんな財政状況だったのだ。

「そうッスよね……」

堀口はあごが鎖骨につくほど深くうつむき、鼻から大きく息を吐き出し、ゆっくりと目を閉じた。万策尽き果てたといったその顔を見ていると、何もしてやれない自分の無力さが情けなくなった。

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  • 「こんなのツモっちゃったよ~」とか言わないでください、社長・・・「こんなのツモっちゃったよ~」とか言わないでください、社長・・・

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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