六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編25】恋のダイヤル6700

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電話の向こうにいるのは『ライズ』の店長だった。

「あ……店長。お疲れ様です。」

電話の奥からはいつもの『ライズ』の喧騒が漏れ聞こえてくる。今日も繁盛しているようだ。私は布団に潜り込んだまま、寝ぼけた声で返事をする。

「ごめんね、寝てた?今、家?」

「そうです。なんですか?今日、俺休みですよね?」

休みの日に店長が電話してくることなど、今まで一度もなかった。起き抜けの回転しない頭でも今日が休みであることに確信はあったが、念のため尋ねてみた。

「いや、長崎くんはいいんだけどね、休みで。ところで、堀口くん知らない?」

堀口の名前が出て私は一気に目が覚め、布団から身体を起こした。

「堀口、どうしたんですか?出勤してないんですか?」

「いや、そういうワケじゃないんだけどね……」

「なんかあったんですか?」

「いや、長崎くんは気にしなくていいんだけど……」

そう言うと店長はしばらく黙ってしまった。電話口からはジャラジャラという麻雀卓が稼働する音だけが聞こえてくる。

「じゃあいいや、とりあえずありがとう。寝てるとこ悪かったね。明日は出勤よろしく」

「はい……」

なんとも腑に落ちないまま電話を切ろうとした瞬間、

「あーちょっとまって!もし、堀口くんからなんか連絡があったらウチに電話くれるかな。よろしくね」

その言葉を残すと、店長はさっさと電話を切ってしまった。通話が終わり携帯電話を閉じると、暗闇の中で点けっぱなしだったテレビだけが煌々と光を放っていた。私はなんとなく明かりをつける気にならず、しばらくその暗闇の中で呆然とテレビを眺めた。

堀口に何かあったのだろうか。直接聞いてみようと、携帯電話を開いて電話帳から堀口の名前を探す。友人が少ない私の電話帳から一人の人物を探し出すことは実に容易な作業だった。

だが、何を話せばよいのだろう。店長から具体的に何があったのかを聞いたわけでもないし、そもそも私と堀口は普段、電話で話をするような仲ではない。

そんな言い訳じみた考えが頭を支配しているうちに、「通話」ボタンが押せないまま朝になった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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