六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編26】終わりの始まり

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「おはようござ……」

「はい……いえ。もちろんそう考えております。はい……」

翌朝『ライズ』に出勤すると、カウンターで店長が誰かと電話で話をしていた。邪魔してはまずいと思い、私は挨拶の声を途中で止めた。

私の顔を見た店長は、ボールペンを持ったままの右手を黙って上げた。その顔はいつも温厚な店長からは考えられないほど深く眉間にシワを寄せ、苦悩に満ちたものだった。

ただならぬ雰囲気を感じた私は、下衆な行動だとは思いつつも、ロッカーの影に身を潜めて聞き耳を立てた。

「はい……仰るとおりです。申し訳ありません……はい」

店長は終始謝り通しだ。一体何があったというのだろうか。そして電話の相手は一体誰なのか……

「はい……全て私の不手際ですので……はい。いえ、全て私が……」

店長が何かミスでもしてしまったのだろうか。となると電話の相手は社長?とはいえ、社長は基本的にはおおらかな性格だ。店長がここまで平身低頭になるまで叱責するだろうか……

「いえ、そうと決まったワケではありませんが……可能性は……はい」

開店時間が迫ってきたが、まだ電話は終わりそうにない。聞き耳を立てたまま、着替えを始める。

「いえ、可能性はあると思いますが……被害と……」

「ウィーッス!おはようさ~ん!」

開店時間ギリギリに出勤してきたゲンさんの威勢のよい声で、店長の声はかき消されてしまった。私はロッカーから少しだけ顔を出し、カウンターの方をうかがった。

ゲンさんは私の顔を見るなり、犬猫を追いやるような仕草で私にロッカーの奥へと入るように促し、自分もロッカーへと入ってきた。

ゲンさんはロッカーに入ると、真一文字に結んだ口の前に人差し指を立てた後、その指をそのまま店長のいるカウンターの方へと傾けた。

「……社長や」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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