六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編29】推定有罪

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「堀口……バックレたって言うんですか!?」

私は語気を荒げた。確かに堀口は適当な性格ではあるが、この慣れ親しんだ『ライズ』を突然バックレるほどダメな人間では無い。そう信じたかった。

気色ばんだ私とは対照的に、店長はゆっくりと落ち着いた口調で語りはじめた。

「長崎くんがそう思うのも理解できるよ。僕はね、堀口くんが無事でね、ただのバックレならば構わないと思ってるんだよ。バイトくんが急に辞めるなんてよくあることだしね。ただ……ねぇ」

そこまで言うと、店長は渋い顔で口ごもった。

「何なんですか?『ただ』って?」

私の詰問に答えたのはゲンさんだった。

「無くなってんのよ!レジの金が!札だけゴッソリな!」

「え……」

一瞬、事態を飲み込むことができず、言葉を失った。堀口がまさかそんな……堀口が金に困っていたことは事実だが、店の金に手を付けるような人間だとはどうしても思えない。店長とゲンさんは身じろぎもせずにこちらをじっと見つめている。

「い……いくら無くなってるんですか?」

「21万6000円」

店長の事務的な回答が、事態の深刻さを物語っている。

「でも、堀口に話聞いてみないとまだ……」

私はまだ信じたくないという思いから、堀口となんとかして連絡を取る方法を考えた。だが、電話番号とメールアドレスは知っているものの、自宅の住所は知らなかった。

困惑する私を見て大きくため息をついた店長は、昨日の日報が挟まれたバインダーをブックスタンドへと立てかけた。

それを見た私の脳裏に、一昨日の出来事がフラッシュバックした。

「あっ!その日報のトコに堀口の履歴書ありますよ!それに住所書いてあるから……」

「無いねん!」

「……え?」

「無いねん……堀口ちゃんの履歴書だけな。ロッカーもな、もぬけの殻や」

目を背けたくなるような状況証拠が、次々と積み上げられていく。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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