六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編30】振り向けば奴がいる

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「……どうするんですか?店長」

私は動揺を隠すことができなかった。

「とりあえず社長と話はつけた。お金に関しては全部僕が立て替えることにしたよ。僕の管理不行き届きだからね」

それを聞いたゲンさんは、ため息と共にタバコの煙を吐き出し、黙って首を大きく横に振った。私も黙って店長の話を聞くことしかできなかった。

「被害届も出さないつもりでいる。この件は『ライズ』の中だけの話だから。二人も口外しないようにね」

被害届を出さないという話を聞いて、少し安心してしまった自分がいた。万が一、同僚が――いや、大切な友人の一人が――逮捕されようものなら、何の力にもなってやれずにただ傍観してしまった私は、後悔と罪悪感で押し潰されてしまうだろう。

私は両手を腰にあてて深くうなだれた。

「まぁな、まだ堀口ちゃんが犯人と決まったわけやないからな。客の誰かっちゅー可能性もあるで。そもそも堀口ちゃん、今日は元々シフト休みの日やからな!」

私の落胆を見て、ゲンさんが慰めの言葉をかけてくれた。

「ま、東1局の天和くらいの確率やろうけどなぁ……」

その通りだ。この状況で堀口が犯人ではないなど、左リールにチェリーが出たゲームで告知ランプが光るくらいあり得ないことだ。

「とりあえず明日や!明日まで待と!明日ひょっこり堀口ちゃん出勤してくるかもしれんしな!」

ゲンさんはタバコを灰皿に押し付け、両手をパンッと鳴らした。

「そうだね。二人とも、今日はとりあえず、いつも通りよろしく頼むよ」

「ウイーッス」

「……はい」

その時、背後のドアが開く音が聞こえた。三人の視線が一斉に注がれる。

→NEXT【失踪編31】終わりの、終わり。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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