六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編32】低速リプレイハズシ【その後1】

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堀口が『ライズ』に姿を見せなくなってから一週間が過ぎた。

その間、社長が一度だけ『ライズ』に来て店長と話し込んでいたことを除けば、これまでとなんら変わりない日々が流れていた。

店長を含めた『ライズ』の人間の中では、堀口という男がいたこと、そして店の金『21万6000円』が無くなったことなど、まるで元々無かったことのように、誰もそのことについて口にしようとしなかった。

あの後、一度だけ堀口の携帯に電話を掛けてみた。だが、『電波の届かないところにいるか~』という、無機質な女性の声でアナウンスが流れるだけだった。

次の休みの日。私はふと思い立って『スロット デルタ』へと足を運んだ。一人でスロット屋に入るのは始めてだったが、堀口との二度も来ているので、さほど緊張することもなかった。

私は、二階にある『クランキーコンドル』のシマへと向かった。やはり人気があるのか、8割方の席が埋まっていた。だが、その中に堀口の姿はなかった。もちろん、千夏さんの姿もだ。

客のひとりがビッグボーナスを消化している。中リールから押すアレは『リプレイハズシ』というテクニックらしい。堀口から教えてもらったわけではなく、雑誌から得た知識だ。その客は1ゲーム消化するのに10秒近くかかっている。堀口のそれと比べれば、亀とウサギほどの差がある。こうしてみると、堀口がいかに腕の立つスロッターだったのかがよく分かる。

私は『クランキーコンドル』のシマを後にし、1階にある『プチマーメイド』のシマへと足を踏み入れた。あの日以来の再会となる人魚は、今日も青いパネルでスロッターたちを魅了しているようだ。

パネルの左下に鎮座するピンクの貝殻を見ていると、また光らせてみたいという衝動を抑えきれなくなり、前回と同じカド台へと腰を下ろした。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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