六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編33】スロット、辞めよう【その後2】

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――3000円だけ

そう決めて最初の千円札をコインに変え、遊技を開始した。三枚のコインを投入し、レバーを叩き、ストップボタンを押す。一連の動作をこなしながら回転するリールを眺めていると、この一週間、私の頭を覆っていた濃い霧のようなものが、徐々に晴れていく気がした。

――もう、あきらめよう

堀口のことも、千夏さんのことも。自分自身にそう言い聞かせると、心が少し楽になった。そう思った途端、さっきまでは作業のように消化していた目の前のスロットも、1ゲーム1ゲームを楽しめるようになった。

――おっと!

下皿のコインが残り一枚になり、財布から次の千円札を取り出そうとした刹那、左下のピンクの貝殻が淡い光を放った。約10日ぶりの再会だ。やはり君は美しい。しばらく貝殻を眺めてから、私は下皿に残された最後の一枚のコインを手に取った。

ビッグとレギュラー、どちらから狙えばよいのか……。堀口がいたら何と答えただろうか。彼のことだから『どっちでもイイんじゃないッスか!』などと適当に返答するに違いない。

――ビッグから狙うか

そう決めて、1枚がけでレバーを叩いた。回転する左リールを凝視しながら、堀口に教わった『光る金髪』を探した。それが見つかると、次は回転に合わせて心の中で『キラッ……キラッ…』と唱えた。その時、ある事が頭をよぎった。

――もし、これがレギュラーだったら、スロットは今日で最後にしよう

なぜこんなことを思ったのか自分でも分からないが、私は自分自身と『賭け』をすることにした。スロットが嫌いになったわけではない、むしろ好きだ。それでも、レギュラーだったら潔く辞めよう。強がりでもなんでもなく、不思議とその覚悟ができていた。

あらためて、金髪の人魚を探す。これか……

『キラッ……キラッ……ハイッ!』
『キラッ……キラッ……ハイッ!』
『キラッ……キラッ……ハイッ!』

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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