六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編34】その男、凶暴につき【その後3】

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どうやらスロットの神様に首根っこを掴まれてしまったようだ。勝ち逃げは許さない、ということだろうか。だが、考えたところで神様の真意など理解できるはずもない。私は派手なファンファーレを全身に浴びながら、ビッグボーナスを消化した。

ビッグボーナスが終了し、台に静寂が戻る。フーっと大きく息を吐き出し、レバーを叩こうとした瞬間、私は両肩にズシンと重い衝撃を感じた。

「兄ちゃん!目押しできるようになったんか!」

振り返った私は思わず息を呑んだ。そこには、小太りで前歯が大きく欠けたパンチパーマの男が悠然と立っていた。

「久しぶりやな!兄ちゃん!」

そうだ。以前堀口達とここへ来た時に、ボーナスを揃えられずに困っていた私の元へ突如現れ、いとも簡単に人魚を揃えて去っていったあの男だ。しかも、それだけではない。その風貌は、堀口を殴った『足して20の男』の特徴と見事に符合しているではないか。

私は勢い良く椅子から立ち上がった。

「あ……あんた!」

「なんや?」

「え……あの……」

私は言葉に詰まった。この男が堀口を殴った『足して20の男』であるという確たる証拠は何もない。だが、仮にそうだったとしたら、この男はヤクザ――もしくはそれに準ずるような存在――ということになる。私は何を言えばいいのかわからず、立ち尽くした。

「だからなんやの?兄ちゃん」

人を喰ったような目を見ていると、その迫力に気圧されてしまう。

「あ、いや……目押し、できるようになりました」

我ながら根性無しだと思う。だが、今更何ができるというのか。もしこの男が『足して20の男』だったとしても、私には互角に対峙できる力も器量もないではないか。そんな陳腐な言い訳に頭の中を支配されながら、私は毒にも薬にもならない回答でお茶を濁してしまった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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