六本木ヒルズからの七転八倒

【失踪編4】ウサギのような赤い目

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「大丈夫ならいいんだけど。とりあえず着替えてきて」

「はい、すいません……ッス」

4階へと戻り『ライズ』の扉を開けると、カウンターを挟んで店長と話す堀口の後ろ姿があった。背中を丸め、肩を落としたその姿は、まるで天寿を全うする直前の『つくし』のようだった。

いつもとは違う堀口の雰囲気を感じていた私は、とりあえず、当たり障りのない言葉をその背中に投げかけてみた。

「堀口、珍しいね、遅刻なんて。いつもだったらギリギリで……」

振り返ってこちらを向いた堀口の顔を見て、私は思わず息を飲んだ。

「……どうしたの、それ?」

堀口の目は、左目だけがまるでウサギのように真っ赤に充血していた。右目はいつもと変わらない綺麗な瞳だったので、その異様さが余計に際立っている。それだけではない。マスクから覗く左の頬骨からこめかみにかけて、大きな青アザができていたのだ。

「イヤ、何でもないッス……」

そう言うと堀口は、左手で顔を覆うようにして従業員用のロッカーへと消えていった。その背中を呆然と見送った私は、店長と顔を見合わせた。店長は私の顔を見ると大げさに眉をひそめ、無言で私に手招きをした。

「今日からしばらく、堀口クンは『本走』は控えて『立ち番』メインにやってもらうようにするから。あの顔で打ってたらお客さんも気になっちゃうだろうからね。長崎クンもそのつもりでいてね」

「分かりました。店長、アレの理由聞きました?」

私はロッカーの方を指差して、『アレ』が何であるかを伝えた。だが、店長は何も言わずに首を横に振り、手のひらを上に向けるジェスチャーを見せた。店長は元々「仕事さえキチンとしてくれれば、細かいことには口を出さない」という考え方の人だったので、敢えて詮索はしなかったのだろう。

「長崎クンは知らないの?」

そう尋ねる店長に向けて、私が手のひらを上に向けるジェスチャーをした時、ロッカーの方からゲンさんの大きな声が聞こえてきた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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