六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編01】「何って……スロットだよ」

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池袋のスロット屋『ライムライト』で私の第二夫人『ジャグラーガール』と束の間の逢瀬を楽しんでいると、ズボンのポケットに入れた携帯電話が震えた。てっきり第一夫人である裕子からだろうと思い、電話を開くと、そこには思わぬ人物の名前が表示されていた。

私は左耳に携帯電話を押し当て、同時に右耳を右手の人差指で塞いだ。だが、この程度の対策では店内の喧騒が勝り、電話の向こうにいる『木部聖人』の声は私の鼓膜まで届かない。私は「もしもし?もしもし?」と続けながら店の外へと飛び出した。

太陽が首都高の向こう側で頭を隠し始めていた。十月も半ばになると日が落ちるのも早い。私は太陽に背を向けて、あらためて呼びかけた。

「もしもし、木部?聞こえる?」

「聞こえますよ。先輩、お久しぶりです。またスロットですか?」

ようやく聞こえたその声は、以前と何も変わっていなかった。

「そうだよ。今『ジャグラーガール』とイイ雰囲気だったのに邪魔すんなよなぁ、タイミング悪い。それにしても久しぶりだな。一年ぶりくらいか。急にどうした?」

私は久しぶりに聞く木部の声にテンションが上がり、思わず軽口を叩いた。木部は電話の向こうで「先輩、相変わらずッスね」と小さく笑い、言葉を続けた。

「先輩、今何やってるんですか?」

「何って……スロットだよ」

「いや、そうじゃなくて。仕事、何やってるんですか?」

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  • 我が麗しの第二夫人。我が麗しの第二夫人。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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