六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編02】咄嗟についた、嘘

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「え……あぁ」

もちろん、最初の質問の時点でその真意は理解していた。一年ぶりに話す人間に対して「今何してるの?」と訊かれれば、それはほとんどの場合、「何の仕事をしているのか」という意味だろう。私はそれを理解した上で、わざと意味を履き違えて答えた。半分、いや、二割くらいは冗談だが、残りの八割は「訊いてほしくない」からだ。

「え……っと。たまに短期のバイトしたりしながら……あとはスロットで稼いでる感じかな」

私は半分だけ嘘をついた。

木部とは大学生協のアルバイト時代に知り合った。私の半年ほど後に入ってきた木部は、三歳年上の私を『先輩』と呼んで慕ってくれていた。その職場の上司にあたる人と喧嘩をして、「じゃあ辞めます」と私が啖呵を切ったとき、一番真剣に引き止めてくれたのが木部だった。結局、私は大学生協を辞めた。それからというもの、生活費の全てをスロットで賄っていて、短期のバイトなど一度もしたことはなかった。

「マジっすか?スロットで稼いでるんですか!?スゴイっすね!」

木部は私の言葉を疑う様子もなく、驚いていた。いや、もしかしたら疑っているのかもしれない。スロットで稼いでいるという方が嘘で、実際は短期のバイトで糊口を凌いでいるのだろう、と。

これ以上突っ込んで訊かれると、嘘に嘘を重ねてしまいそうだったので、私は木部に話を振った。

「お前の方こそ最近どうなの?確か今年、大学四年じゃなかったっけ?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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