六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編03】順調らしき、就活

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電話の向こうで木部が小さく唸った。私は構わず続けた。

「就活の調子はどうなの?」

「あぁ、そうっスね。順調ですよ。それより先輩、スロットで稼いでるってスゴイですね!」

木部はあっさりと答えてから、すぐに話題を戻した。私は就職活動というものを経験したことがないので、木部の言う『順調』というものがどういう状況なのか、判断できなかった。

「先輩、明日ヒマだったら呑みませんか?積もる話もあるじゃないッスか!」

「あぁ、いいよ別に。じゃあ新宿あたりでどう?」

「オッケーです。もしくは、前によく行ってた『一休』でもいいッスよ」

私は大学生協でアルバイトしていた頃の記憶がフラッシュバックした。良い思い出も沢山あるはずなのだが、こういう時はなぜか悪い記憶ばかりが思い出される。私は思わず額に手をあてて頭を振った。

「いや、あそこは駅から遠いし、バイトしてたころの顔見知りと会っちゃったら気まずいから……」

「そうですよね」

木部は最初からわかっていたと言いたげな口調だ。

「あと、もしかしたら俺の相方を連れて行くことになるかもしれないけど、いいかな?」

「お!『お引き』ですか?」

「違うよ!ただの彼女だよ。木部、最近も麻雀打ってる?」

「麻雀もスロットも最近はご無沙汰ッスね。今度やりましょうよ」

「そうだな。そのへんの話も明日しよう」

「わかりました。それじゃあ明日。スロット頑張ってください」

私は「おう」と短く答えてから電話を切った。ちょうどその時、『ライムライト』の自動ドアが開き、一人の客が出てきた。自動ドアが開くと同時に、喧騒と熱気が夕刻の街へと溢れ出した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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