六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編07】「『きのけん』さんですよね?」

←BACK【師弟編06】カフェオレ飲んでる……

私はカフェオレを喉に流しこみながら、ベットボタンを叩いた。カフェオレの糖分が脳へと直接作用したわけではないだろうが、少し気分が落ち着いた。ここからは自分のペースで消化しよう。隣の客があんなに焦って遊技していたのでは、きのけんも鬱陶しいと思っていることだろう。私はきのけんと同じように、右手でカフェオレを持ち、左手で消化を始めた。同時に、私はあることを考え始めていた。

――さて、どうやって話しかけようか。

脳内でのシミュレートはすでに完璧だ。

――あの……『喰うしかなかろが』の『きのけん』さんですよね?僕、ファンなんです。握手してもらっていいですか?あ、ありがとうござます。この店でよく打つんですか?僕もスロットで喰ってるんですよ。月最低でも二十くらいは稼ぐように……あ、はい、池袋が中心ですね。きのけんさんはいつもどこで打ってるんですか?

完璧だ。この後、話が盛り上がって――じゃあ呑みに行きませんか?近くに美味い焼き鳥屋があるんですよ――という流れになり、誌上プロ『きのけん』と晴れて友人となる。そしてあれよあれよという間に、私も月刊パチスロキングでコラムの連載を持つことになる。コラムのタイトルは……『ジャグラーで喰う!』だな。

完璧すぎる。あとは声を掛けるだけだが、タイミングが難しい。決して邪魔にならないタイミングで、且つ自然な感じでなければならない。そうだな……次にきのけんがメモ帳を手に取った時が勝負だ。

私は脳内で「あのー『喰うしかなかろが』の『きのけん』さんですよね?」というセリフを繰り返し練習した。そして、100ゲームほど消化したところで、遂にその時が訪れた。きのけんが台上に置いていたメモ帳に手を伸ばした。私は意を決して口を開いた。

「あの……」

「あのー!!」

→NEXT【師弟編08】「なんで中押ししてるの?」

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

3月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

戻る