六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編09】舐められてんのかな、オレ

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翌日。私と裕子は高田馬場駅に降りた。『鉄腕アトム』の発車メロディを背中に聴きながら、改札を抜けて『さかえ通り』へと入った。

「なんで『一休』なんだよ……。アイツ、何かたくらんでるんじゃないだろうな」

私は誰ともなくつぶやいた。隣では裕子が私の腕に絡みついてくる。私の気分とは裏腹に、やけに嬉しそうだ。

「どうしたんですか裕子さん?やけに楽しそうじゃないですか」

「えー?だって、なんか懐かしいじゃん。『一休』なんてアレ以来だよね」

――アレ以来

そうだ。『一休』は私と裕子が始めて出会った場所だった。そういう意味では私も少なからず懐かしさを感じていた。だが、喧嘩同然で辞めたバイト先の人たちも入り浸っている居酒屋だけに、当時を知る人と鉢合わせてしまうのではないかと思い、それ以来、この『さかえ通り』に足を踏み入れることすらためらっていたのだ。

それを知ってか知らずか、当初の待ち合わせ場所である『新宿アルタ前』付近を裕子とブラブラしていた私の携帯電話に、30分ほど前に木部から電話が入ったのだ。

「先輩!やっぱり『一休』にしましょう!っていうか、もう『一休』で一人で呑んでますから!早く来てください!」

「はぁ?」

私は木部から慕われていると思っていたが、これは舐められているだけなのではないだろうか。そんな思いが脳裏をよぎったが、可愛い後輩のわがままをきいてあげるのも先輩の勤めであろうと考えなおし、新宿駅へから山手線へと乗り込んだのだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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