六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編10】大衆居酒屋に浮かぶ雲

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「いらっしゃい!お二人?」

『一休』の暖簾をくぐると、以前と同じ看板娘のおばちゃんが威勢よく迎えてくれた。

「いや、待ち合わせなんですけど……」

私は店内を見渡した。平日の夜だけあって、店内は仕事帰りのサラリーマンでごった返していた。店の天井付近にはタバコの煙が雲を作り、歓談とは言いがたい「怒号」がそこかしこに飛び交っていた。決して上品とは言えない雰囲気ではあるが、それが裕子と出会った当時と何も変わっていないことに私はノスタルジックな気分になった。

「うへぇ、こんな感じだったっけ?オジサンだらけじゃん」

肩越しに顔を出した裕子が眉をひそめた。

「そうだよ、むしろ全く変わってないくらいだよ」

「そっか。それにしても、よくこんなトコにアタシたち呼びつけて合コンなんかしたね。もうちょっとイイ雰囲気のお店にするでしょ、普通は」

「俺はあの時も反対したんだけどね……」

その時、窓際のテーブル席から男がヒョコっと顔を出した。木部だ。

「先輩!!」

木部は私たちの顔を見つけると、高く腕を上げて手招きをした。

「先輩、遅かったじゃないですか!」

「遅くないだろ!むしろ待ち合わせの時間より早いくらいだわ!お前が一人で勝手に呑み始めてるだけだろ!」

「いやー、まぁいいじゃないですか。とりあえず座ってくださいよー。おっと!はじめまして!木部聖人と申します!」

木部はピンと背筋を伸ばして裕子に敬礼をした。裕子は若干顔をひきつらせて軽く会釈で応えた。私は裕子を連れてきたことを少しだけ後悔した。

変わっていないのはこの店だけではなく、木部の酒癖の悪さも同様だった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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