六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編100】告知音は『ガコッ』ではなく『ゴンッ』

←BACK【師弟編99】空を切る金属バット
「アタシ、キャプテンだったんだよ。前にも言ったっけ?」

裕子は合成皮のバスケットボールを胸のあたりにパスしてきた。いかにも元バスケ部といった感じのチェストパスだ。

「俺だってスタメンだったんぜ。同学年の部員、7人しかいなかったけど」

私は感触を確かめるように何度かドリブルをしてからバウンドパスで返した。

「なんか懐かしいよね。中学時代のこと思い出しちゃう」

裕子はフリースローラインのあたりからゴール目掛けてシュートを放った。その手から離れたボールは抜けるような青空にやわらかな放物線を描き、心地良い音と共にリングを通り抜けた。

「ホラッ!見た今の!リングにかすりもしなかったよ!」

裕子は嬉しそうにゴールを指差した。

「やるねぇ。リングに当たらずに入った時の『ザシュッ』って音が気持ちいいよね」

「『ザシュッ』じゃなくて、『シュパッ』でしょ?」

「どっちでもいいよ。なんかジャグラーガールの告知音が『ガコッ』には聞こえないって主張してる人みたいだな」

「あれはどう考えても『ゴンッ』でしょ」

私は心の中で『ゴンッ』だけは違うと思いながら、シュートを放った。ボールは『ゴンッ』と鈍い音を立ててリングに当たり、外れた。

「そういえば、木部も元バスケ部だって言ってたな」

裕子は「ふーん」とだけ答え、シュートを放った。またしても『ザシュッ』という心地良い音を響かせた。

「明日さ……木部っちの最終日じゃん?だから木部っちが打ちに行くお店にアタシたちも行こうよ」

「そうだね、最後くらいキチンと見届けてあげようか」

転がるボールを拾い上げ、その場でドリブルした。ボールと床がぶつかり合う音が、短い沈黙を埋める。私がシュート体勢に入ったとき、裕子が口を開いた。

「そこにさ……五十嵐ちゃんも呼ぼうよ」

→NEXT【師弟編101】修羅場の予感

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

11月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

戻る