六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編101】修羅場の予感

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私はシュートを打つ直前で動きを止めた。

「五十嵐さん……呼ぶの?」

「うん。ダメかな?木部っちに明日どこのお店で打つか聞いて、アタシが五十嵐ちゃんにメールする」

私はボールを小脇に抱えて天を仰いだ。言いようのないモヤモヤが広がる私の心中とは裏腹に、見上げ先には雲ひとつ無い青空が広がっていた。

元をたどれば、酒に酔った私が木部を煽ったことに端を発する。さらに五十嵐さんまで巻き込んでしまっている。どのような結論になるのかは分からないが、傍観するわけにはいかないだろう。私は両手で山なりのパスを裕子に投げた。

「いいんじゃない。どうなるかわかんないけど。二人で大ゲンカ始めちゃったりするかもな」

冗談めかして言うと、裕子も苦笑いを浮かべた。裕子も多少なりとも責任を感じている部分があるのだろう。裕子が放った三本目のシュートは、ボードに当たってゴールからこぼれ落ちた。

その夜、木部からメールが届いた。今日は負けてしまい、目標まで残り二万円ちょうどになったらしい。私は返信メールでさりげなく明日行くホールを尋ねた。数分後に届いた返信には、池袋の『スロット トヨタ』で朝イチから打つとのことだった。

それを裕子に伝えると、裕子は携帯電話を開いた。いつもはもの凄い指さばきでメールを打つ裕子だが、打っては消し、打っては消しを繰り返しているようだった。十分後、ようやく裕子は携帯をテーブルの上に置き、大きなため息と共にクッションに顔を突っ伏した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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