六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編102】食事休憩までメシ抜き

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翌朝、目覚まし時計の不愉快なアラーム音によって目を覚ました。アラームを止め、頭をかきむしる。カーテンの隙間からは健康的な秋の日差しが差し込んでいる。

隣にいた裕子が転げ落ちるようにしてベッドから這い出し、テーブルの上に置いてあった携帯電話に手を伸ばした。寝ぐせの付いた髪をかき上げてそれを開くと、短く息を吐いてすぐに閉じた。

結局、五十嵐さんからは何の返信も来なかったようだ。私はあえてそれを尋ねずに、「おはよう」と声を掛けた。裕子は声にならない声で「うん」と唸り、洗面所へと消えていった。

枕元に置いていた自分の携帯電話を開くが、誰からの着信も無かった。これはいつものことなのだが、なぜか妙な胸騒ぎがした。

時計に目をやると、あと三十分で家を出なければならない時間だった。鉛のように重い身体を布団から引きずり出し、ベッドに腰掛けて両手で顔を拭った。

「朝ごはん、食べる時間無いよね?」

洗面所から裕子の声が聞こえた。

「カップラーメンでもあるなら食べたいけどね」

私はベッドに倒れ込みながら答えた。

「こないだ全部食べちゃったからもうないよ」

「じゃあ、お昼の食事休憩までメシ抜きだな」

それに対する返事はなかったが、洗面所で不満気な顔をする裕子を容易に想像することができた。

私たちは早々に準備を整え、家を出た。頬を撫でる風が、季節が秋から冬へと変わることを報せてきた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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