六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編104】タバコの臭いがつくからパーカー

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振り返ると、そこには五十嵐さんが立っていた。

「今朝は結構冷えますね」

五十嵐さんは手もみするように両手を擦り合わせた。

これまでに会ったときは新人OLのようなフレッシュなスーツ姿を見せていたが、今日の五十嵐さんはグレーのパーカーにベージュのチノパンという、まさに『どこにでもいる大学生』といった出で立ちで私たちの前に現れた。

偶然なのか必然なのか、ほとんど同じデザインのグレーのパーカーに両手を突っ込んだ裕子が、ポカンと口を開けて五十嵐さんの顔を見ている。私もしばらく声が出なかった。

「『スロット トヨタ』って、あそこですよね?」

五十嵐さんが通りの先を指差した。その問いかけで、私はようやく我に返った。

「そう……ですけど、五十嵐さんも行くんですか?」

私は少し肩をすくめて、五十嵐さんの顔を覗き込むように訊き返した。

「そちらが……裕子さんが教えてくれたんじゃないですか」

五十嵐さんは手のひらを上に向け、裕子に差し出した。裕子もようやく状況を理解したようだ。

「来るんだったら返信くらいしなさいよね!こっちがせっかくメールしてあげたっていうのに。それに何?その格好。アタシと被ってるじゃん!」

裕子は五十嵐さんのが着ているパーカーを指差しながらまくし立てた。

「パチンコ屋さんってタバコの臭いが服に付いちゃうからイヤなんです!だから裕子さんみたいにラフな格好してきたんです。ダメなんですか?」

「別にダメとは言ってないけどさ……」

裕子は言葉を濁した。裕子の口調は喧嘩腰ではあったが、その顔には明らかに安堵の表情が浮かんでいた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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