六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編106】秋空に咲く、『大花火』

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四人の間の空気が一瞬だけ張り詰めた。それを打ち破ったのは、一方のパーカー娘だった。

「五十嵐ちゃんはアタシが勝手に呼んだの。木部っち、ゴメンね。でも……っていうか、アンタたち付き合ってるんなら連れスロぐらいしたっていいじゃん!何カリカリしてんのさ!ほら並ぶよ!」

裕子は謝罪とも開き直りともつかない言葉を一方的に並べ立て、五十嵐さんの腕を掴んで列に並ばせた。私は顔の前で手刀を立てて木部に謝意を伝えた。

冬の始まりを報せるように、冷たい風がこれから戦場へと赴くスロッターたちを容赦なく攻め立てた。裕子と五十嵐さんはパーカー姿では防寒が不十分だったらしく、ポケットに手を突っ込んで小さくなっていた。木部は我関せずといった雰囲気でスロット雑誌を読みふけっていた。

遠くのほうから鐘の音が聞こえた。家電量販店の屋上にある時計が十時を告げたのだ。店員の誘導――という名の怒号とともに、私たちは店内へとなだれ込んだ。

「アタシのとなりで打ちなよ。っていうか、本気で打つつもりあるの?」

「え……わたしは……」

「まぁいいや、とりあえずついて来て!」

歯切れの悪い五十嵐さんの手を引いて、裕子は小走りで店内の奥の方へと消えていった。二人を見届けてから、私はのんびりと入店しつつ木部の姿を探した。

AT機とストック機が並ぶシマを抜けた先にある『大花火』のシマで木部を見つけた。木部はちょうどシマの真ん中あたりの台を確保していた。そうこうしているうちに『大花火』のシマは満席になってしまった。

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長崎 正吾

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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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