六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編107】本日のジャグラー講座

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確かにプラス1000枚を稼ぐには『大花火』という選択肢は現実的かもしれない。だが、この店――『スロット トヨタ』はメリハリのある設定配分をすることでも有名だ。それは『大花火』とて例外ではなく、一台の設定6と、それ以外の設定1といった具合に天国か地獄しかないのが常だった。

そのことを把握しているかと木部に尋ねるべく肩を叩こうとしたが、思いとどまった。今それを教えたところで木部はおそらく『大花火』を打つであろうし、逆に心変わりして別の機種を打たれても責任が取れない。スロットは店に入った瞬間から自己責任なのだと自分に言い聞かせ、私は木部に声も掛けないまま『大花火』のシマを後にした。

ぼやぼやしている間に店内は人で溢れかえっていた。私は慌てていつものシマを目指した。『ジャグラー』のシマに入ると、手前のカド台とそのとなりに地味なパーカー姿がふたつ目に入った。私はカドから三台目のジャグラーの下皿に携帯電話を放り込んだ。

「本日もジャグラー講座ですか?」

私が尋ねると、カド台に座る五十嵐さんとそのとなりの裕子が顔を見上げてきた。私が腰を下ろすと、裕子は膝の上に置いた財布から千円札を取り出しながら答えた。

「ここが一番いいでしょ。AT機とか打つよりもお金も使わなくてすむだろうし。それと……」

裕子が右手で壁を作るようにして私に耳打ちした。

「もし、五十嵐ちゃんが負けちゃったら、三人で『ノリ打ち』ってことにするからね。よろしく」

私に答える隙も与えず、裕子は五十嵐さんの方へ顔を向けて何やら話し始めてしまった。

できることならば自力で勝利をもぎ取って欲しいところだが、ダメだった場合に備えて私も頑張らなければなるまい。私は尻ポケットから財布を取り出した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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