六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編125】並盛りと卵をビタ押し

←BACK【師弟編124】「BIG 13 REG 13」

スロプー生活に身をやつしてから、何杯目の牛丼だろうか。キン肉マンほどではないにしろ、かなりの数に達しているのは確かだ。

食券機に500円玉を投入し、牛丼の並盛りと生卵を目押しすると、スベリを伴って二枚の食券が下皿に吐き出された。

食券を手にカウンター席に腰を掛けようとしたとき、脇腹のあたりに拳銃を付きつけられるような感覚に襲われた。私はサモ・ハン・キンポーのような身のこなしで身体を翻し、銃口の先に目をやった。そこには、右手で作った拳銃を突きつける裕子の姿があった。

「なんだ、いたんだ。五十嵐さんも一緒?」

私が訊くと、裕子は無言で店の奥に銃口を向けた。そちらに顔を向けると、三席だけあるテーブル席の一番奥で、五十嵐さんが軽く会釈をしてくれた。

「黙って歩きなさい」

裕子は手拳銃を突きつけたまま、私をテーブル席に向かうよう命令した。

「さっき電話したんだぞ。なんで出ないのさ」

「あ、ホント?バッグに入れっぱなしだったから気が付かなかったかな。ごめんごめん」

裕子は悪びれる様子もなく言った。テーブルにつくと、裕子は奥の自分の席に身体を滑り込ませ、私をとなりに誘導した。

「またご飯だけ残してる……」

裕子の前に置かれた牛丼の器には、少量の米だけが残されていた。裕子は牛丼を食べると必ず、先に肉を食べ尽くしてしまうという食癖があった。

「正吾の牛丼がきたらお肉もらって食べるからいいの!」

「俺が来なかったらどうするつもりだったんだよ」

「……そのまま食べるつもりだった」

「ウソつけ。明日からバッグにごま塩でも入れときな」

裕子の左ストレートが私の右肩にクリーンヒットした。それを見て、対面に座る五十嵐さんがクスクスと笑った。

→NEXT【師弟編126】パチスロは、決断の連続

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

6月≫
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

戻る