六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編127】スロプロの素養

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「高設定っぽいの?その台は」

裕子の言葉に呼応して、五十嵐さんがその答えを催促するように何度も頷いた。

「現時点でBIG 13 REG 13 だね。高設定の可能性も十分あると思う」

事実とそれに基づく推測を伝えると、五十嵐さんは力なくうなだれた。

「でも、大花火で二万も負けてますからね。これでノルマはプラス2000枚にまで増えてますよ」

他人の不幸を喜ぶわけではないだろうが、五十嵐さんの顔がパッと明るくなった。

「でも、タイムパークの高設定だったら2000枚くらい出ちゃうでしょ」

五十嵐さんの希望を打ち砕くような現実を裕子が突きつけた。

「どうだろうね。確かにタイムパークの高設定は甘いけど……ヒキ次第で……」

――牛丼の並盛りと卵、お待たせしましたー。ごゆっくりどうぞー

私の言葉を遮るように、店員が牛丼をテーブルに置いた。次の瞬間、私に許可を取ることもなく、さも当然といった様子で裕子の箸がのびてきた。

「お米、乾燥しちゃったよ。卵も少しちょうだい」

肉を何枚か強奪したかと思えば、次は卵を寄越せと言い出す。裕子は勝手に卵を割り、器の中でかき混ぜ始めた。五十嵐さんはその様子を、微笑ましく眺めていた。

「2000枚がノルマになっちゃいましたけど、木部は気にしている様子はなかったですね。実に冷静というか……」

不意に私が話を戻したことに驚いたのか、五十嵐さんは大きくまばたきした。

「高設定台に座っている客の風貌までキチンと覚えているのは大したものだと思いましたよ。仮に今日、負けてしまったとしても、木部はスロプロとしてやっていけるでしょうね」

三人の間に、卵をかき混ぜる音だけが流れた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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