六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編129】ベル否定、1確

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食事を済ませ『スロットトヨタ』に戻ると、三人揃って『タイムパーク』のシマへ木部の陣中見舞いに向かった。遠くから見えた木部のデータ表示機には「BIG 15 REG 13」の数字が並んでいた。 

「木部!二回も引いたんだ。すごいな」

私は肩口から声をかけると、木部は私たちの顔を一瞥して親指を立てた。

「先輩が食事休憩に行ってからすぐに引いたんで、追加投資無しでしたよ。やっぱ『ウィンちゃん』は面白いッスね。リプレイハズシも簡単だし」

笑って言う木部の台の液晶画面に演出が出現し、ベルが左から右へと流れていった。木部は躊躇なく左リールを停止させた。停止したのはタイムパークでもっとも気持が良い『ウィン・スイカ・ウィン』の出目。ベルを否定しているので、1リールボーナス確定の出目だ。木部は小さくガッツポーズをして、そのままウィンちゃんを一直線に揃えた。木部が打ち始めてから三度目のビッグボーナスだ。

「やるねぇ。ほどほどに頑張れよ」

私は木部の肩を叩いた。裕子も木部の肩を指先で軽く二度叩き、親指を立てて見せた。それに応えると、木部は五十嵐さんを無視するように台に向き直った。五十嵐さんは一瞬だけむっとしたような表情を浮かべたが、意を決したように木部の肩をむんずと掴んだ。

「あと2000枚なんでしょ?頑張ってよ!プロ!」

木部の耳元で、店内の騒音をかき消すくらいの大声が炸裂した。私と裕子は狐につままれたように立ち尽くした。木部は目を丸くして右耳を押さえている。

五十嵐さんはそれだけ言い残すと、ニヤリと頬を上げて自席へと歩き出した。その背中からは、一切の迷いが消えた凛々しさが漂っていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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