六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編136】本田宗一郎は、言った。

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「仕方がないとぉ!!言いますかぁ。こんな日もあるよねとぉ!!言いますかぁ」

店長はジャグラーのシマを一旦通りぬけ、カド台に座る五十嵐さんの斜め後ろのスペースで仁王立ちした。

「今日は高設定で粘っているお客様が少ないんじゃぁないですかぁ」

店長の声がトーンダウンしている。やはり根っからのマイクパフォーマンス好きなのだろう。煽って盛り上げたいのに、札を挿すのに最適な台が見当たらないらしい。

「どーこーにー挿ーそーうーかーな!」

仁王立ちのまま逡巡しているようだ。客も固唾を呑んで店長の動きに注目している。この店は高設定が不発だった場合、翌日も据え置きされることが多々あるので、明日以降の設定推測の情報としてもかなり重要なのだ。

「よぅし!!決めちゃいましたよぉ!!」

マイクを握り直し、脇に挟んでいた『6』と書かれた札を左手に持った。その時、裕子の台からビッグボーナスのファンファーレが鳴り響き、肝をつぶした。店長の方ばかり見ていたのでペカったことすら気づかなかった。私は裕子に小さく頷いてから、店長へと視線を戻した。

「出ている台の両隣はぁ!!稼働が落ちるとぉ!!かの本田宗一郎は言ったそうですよぉ!!」

絶対に言ってない。店内からも笑いが漏れる。

「しかしぃ!!私はそうは思いませぇん!!高設定を並べてしまえばぁ!!いいのですぅ!!それではぁ!!せっっってぇぇぇぇい!!発表!!」

言い終わると同時に、店長はくるりと身体を翻し、小脇に挟んだ札をおもむろに頭上高く掲げた。

「女性のお客様ぁ!!お二人並んでおめでとうございますぅ!!せっっってぇぇぇい!!ロクゥゥゥゥゥ!!」

札が挿されたのは、カドの五十嵐さんの台だった。五十嵐さんは突然中年男性の身体が迫ってきたことに驚き、身体をのけ反らせた。私と裕子は呆然とそれを見届けた。

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長崎 正吾

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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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