六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編139】全部……出ちゃった

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「彼……何て言ってました?」

木部がジャグラーのシマから立ち去ると、五十嵐さんは裕子の懐に潜り込むように身を乗り出してきた。裕子が邪魔くさそうに身体を反らせた。

「今打ってる『タイムパーク』はヤメるみたいですよ」

裕子を間に挟んで答えると、五十嵐さんは驚いたように目を大きくした。

「もう……全部出ちゃったんですか!?」

五十嵐さんの口から飛び出した言葉に僅かな卑猥さを感じてしまった。私はあらぬ妄想を振り払うように首を振って否定した。

「おそらく1500枚くらいだと思います。だからまだ500枚くらい足りてないんじゃないかな」

「そうなんだ。木部っち、もう諦めちゃったの?」

裕子は無表情で言うと、自分の目の前まで乗り出してきていた五十嵐さんの顎をネコでもあやすように指先でくすぐった。五十嵐さんはその手を振り払い、裕子を睨みつけながら太ももを叩いた。仲がいいのか悪いのか、いまだに判断しかねる。私は右手で頭を掻きながら答えた。

「いや、そういうわけでもないよ。あの台はおそらく低設定だって判断したみたいだね。だからそのまま打ち続けてたらコイン減らしちゃうだろうからヤメるんだってさ。この後、どうするのかは聞いてないけど」

そこまで言って、私は左手に持っていた数枚のコインを下皿に投げ込み、席を立った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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