六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編143】1コマスベッて『7』

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真一文字に閉じた口の端を少し上げて笑みを作ってはいるものの、頬が僅かに痙攣していた。恋人の元へと向かう女性の表情としてはあまりにも硬く、悲しげなものだった。私は何と言葉を掛ければいいのか分からず、何度も小さく頷いた。 

「頑張ってね」

裕子が五十嵐さんの腕のあたりをポンと優しく叩いて、言った。五十嵐さんは「はい」と頷き、木部を探してジャグラーのシマを後にした。その後ろ姿を見送ると、裕子がこちらに顔を向けた。

「どうなると思う?」

裕子は左手だけで器用にゲームを消化しながら言った。

「わからない。でも、今の木部は昔の木部と違って、何か強い信念の元に行動している感じがするんだよ。スロプーとして生きてく覚悟をしちゃってるような、ね。だから、今さら五十嵐さんが説得しても軽くあしらわれちゃうんじゃないかな。そんな気がする」

私が言い終わるかどうかのタイミングで、裕子の台のGOGO!ランプが点灯した。裕子はいつもと変わらない調子でGOGO!ランプを指差し、屈託のなく笑った。一枚掛けで『BAR』を狙う。右リールは1コマスベッて『7』が停止した。レギュラーボーナスだ。裕子はガックリとうなだれ、覗きこむようにこちらを見上げた。

「でもね、木部っちも変わったかもしれないけど、五十嵐ちゃんだって変わってるかもよ」

レギュラーボーナスのBGMが鳴り響く中、裕子の言葉は私の鼓膜を強く揺さぶった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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