六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編145】ネジってネジって、手を離す

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二人は遊技の手を止め、顔を見合わせた。椅子に座り直すふりをして覗き込んだ裕子の横顔は、真剣そのものだった。

「そんなこと……急に言われても困りますけど。そりゃあ別れたくないですよ。でも、できればキチンと就職して欲しいですし、パチスロで食べていくなんてこと……」

淀みながら紡ぐ五十嵐さんの言葉を聞いて、胸のあたりが痛くなった。うつむく五十嵐さんに、裕子がたたみ掛けるように言った。

「スロプーになった木部っちのことは、好きでいてあげられないの?」

五十嵐さんはハッとしたように目を丸くした。だが、すぐには答えを出すことができないのか、首を傾げたり髪を触ったりとまるで小さな女の子のような仕草でまごまごしている。私は二人の邪魔をしないように静かにMAXベットボタンを叩き、レバーを押し下げた。

「ジャグラー、面白かったでしょ?」

裕子はBEXベットボタンの横のあたりを指先で二度叩いた。

「……別に、普通です」

「ウソ!GOGO!ランプがペカるたびにニヤニヤしてたじゃん!スロットの面白さも少しは理解できたんじゃないの?」

「確かに、以前よりはパチスロのことを理解できたような気はしますし、少しは面白いなと思えるようになりましたけど……」

まだ、パチスロを全面的に肯定することができないのだろう。それはそれで仕方のないことだ。だが、少しでも理解してくれたのであれば、師匠――裕子の功績は大きい。私は第三停止ボタンを親指でグリグリとネジってから、滑らせるように手を離した。GOGO!ランプに変化は無い。

「人間はさぁ、生きていれば道を踏み外しちゃうことだってあるさ。どうせスロプーなんてすぐに飽きてヤメちゃうよ。その時、アンタがそばにいてあげなくてどうすんの!」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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