六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編146】特殊人間「ベムとベラ」

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裕子が言い放った言葉は、決して恫喝的でも論理的でもなかったが、言い知れぬ迫力と妙な説得力を備えていた。傍から聞いていただけの私でさえそう感じたのだから、実際に突きつけられた五十嵐さんの心中は推して知るべしだ。五十嵐さんは固まったまま動けずにいた。

小さなため息とともに裕子がレバーを叩くと、回り始めたリールに合わせるように、五十嵐さんの口がゆっくりと動き始めた。

「確かに、パチスロは面白いと思います。だからこそ、すぐに飽きたりヤメたりしないんじゃないですか?お二人がまさにそうじゃないですか」

痛いところを北斗百裂拳で突かれて、ぐうの音も出ない。今すぐ『ひでぶ』と叫んで弾け飛びたい気分だ。私は顔の半分を手で覆って裕子を覗き込んだ。案の定、苦虫を噛み潰しような顔で頬をひきつらせている。

「ア……アタシたちは特殊な人間だからイイの!」

数十秒前に吐いた『良い言葉』が全て台無しになった瞬間だ。言うに事欠いて『特殊な人間』ときたもんだ。その『特殊な人間』という謎のカテゴリには、私たち以外に一体どんな人物が入っているのだろうか。

私は堪えきれずに思わず吹き出してしまった。それにつられるように、五十嵐さんもクスクスと笑い出した。

「何よ!なんで正吾まで笑ってんのよ!何か言ってあげなさいよ!」

顔を真っ赤にする裕子が可愛くもあり、おかしくもあった。その向こうでは、五十嵐さんが胸に手を当てて深呼吸し、笑いを収めようと必死だ。裕子は赤く染まった頬を膨らませて、レバーを叩いた。

「裕子さん、ありがとうございます。わたし……全部、あきらめがつきました」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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