六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編149】審判『ストライーク!!』

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「あれ?もう戻ってきたの。男のトイレは早いねぇ」

女性陣の間から顔を出すと、裕子が口を曲げて言った。

「そんなことどうでもいいんだよ。それより五十嵐さん、木部が打ち始めましたよ。向こうにある『巨人の星』っていう機種です」

そう伝えると、五十嵐さんは背中をピンと伸ばし、息を呑んだ。何か予感めいたものでもあるのか、裕子の顔をじっと見つめたまま無言で固まってしまった。僅かに眉根を寄せた裕子がこちらを見上げた。

「『巨人の星』ってことは、天井が近いの?」

私はかぶりを振った。

「前に打ってたおじいさんが99ゲームでヤメたから、128ゲームまで打つらしい。当たればラッキーって感じだな」

私が言い終わるやいなや、裕子がおもむろに立ち上がり、五十嵐さんの肩を乱暴に叩いた。

「何ボーっとしてんの!見に行くよ!」

その声でようやく我に返った五十嵐さんは、手に持っていたコインを静かに下皿に戻し、ゆっくりと席を立った。伏し目がちなその表情は、これから起きることを見たいような見たくないような、そんな複雑な感情が入り交じっているようだった。

「『巨人の星』っていう台は、128ゲームまでに当たりやすいんです。だから木部は99ゲームで捨てられた台に座って、128ゲーム目まで打つつもりなんです。チャンスがあると言えばあるんですけど、そんなにうまくいくものでもないですから」

私は五十嵐さんを安心させるべく、今の木部の状況を端的に説明した。五十嵐さんはいくぶん和らいただ表情で頷いてくれたが、果たして初心者に理解できただろうか。

女性陣二人を引き連れ、『巨人の星』のシマへと近づくと、しわがれた男の怒号が耳に届いた。

――『ストライーク!!』

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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