六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編15】月収二十万超のプー太郎

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「毎月どれくらい稼いでるんですか?」

「まぁ……最低でも二十は超えるかな」

「ほー、すごいッスね!彼女さんもッスか?」

木部が尋ねると、裕子はアヒルのような口をして、得意げに頷いた。

「スゲェ……スロプロじゃないですか」

「アホか。そんな大層なもんじゃないよ」

「でも、それだけ稼げてればプロでしょう。オレの周りにもスロット打つヤツ結構いますけど、そんだけ安定して勝ってるヤツなんていないッスよ」

「プロねぇ……」

私はグラスの底に残ったレモンサワーを喉に流し込んだ。氷が溶け出していて、ほとんどレモン水になっていた。店員を呼び、レモンサワーと木部の生中を追加注文した。今日は痛飲したい気分になってきた。

――スロプロ

そう呼ばれても、不思議と嬉しさはなかった。むしろ、自分自身の社会的存在意義を問われているような気がして、胸が苦しくなった。生活できればいい。果たしてそうだろうか。自問するには『一休』は場所が悪すぎる。

そんな思考が脳内を駆け巡っていると、ふと昨日の出来事を思い出した。

「そうだ、木部。『きのけん』って知ってる?月刊パチスロキングに連載してる誌上プロ」

「あぁ、喰うしかナントカの人ですよね。知ってますよ。最近は立ち読みしかしてないですけど」

「そうそう、あの『きのけん』みたいな人を本当の『スロプロ』っていうんだよ」

「ふーん、そんなもんスかねぇ。じゃあ先輩は何なんですか?」

「俺は……」

「スロプーとスロプー子!」

裕子が屈託のない笑顔で言った。思わず吹き出しそうになったが、確かにその通りだ。私は裕子の意見に同調するように、木部に向かって深く頷いた。木部は腑に落ちないような顔をして天井を見て何やら考えこんでいる。

「はい!レモンサワーと生中お待ち!」

おばちゃんは、私の前にレモンサワーを置いた。長年この仕事をしているからだろうか、その手は酷く荒れており、深いシワが無数に刻まられていた。これがプロの証なのだろうか。

四杯目の生中がテーブルに置かれた時、木部が突然目を見開いた。

「起業しましょう!三人で!」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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