六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編153】ジャグラー中毒者の末期症状

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「このまま見てますか?」

五十嵐さんに尋ねると、彼女は逡巡するように顎に手をあてた。

「見ときなよ、どうせ大して時間かからないから」

代わりに裕子が答えた。五十嵐さんはとまどいながらも「じゃあ、そうします」と小さく頷いた。

「じゃあ、他のお客さんの邪魔にならないようにね。俺、飲み物でも買ってきますよ。カフェオレでいい?」

「はい、ありがとうございます」

「アタシ、ホットね」

「木部は?」

私が尋ねると、木部は口の動きだけで「ホット」と伝えてきた。私は眉を上げて了解すると、休憩スペースへと向かった。

さすがにこの時間ともなると、各機種各台の明暗がくっきりと別れる。粘っている台はかなりの出玉を確保しているか、もしくは何らかの理由で高設定であると推測される台だ。地域屈指の優良店だけあって、客のレベルも高い。

空き台がもっとも多いシマの通路を抜けて、休憩スペースに入った。
自販機に120円を投入し、ホットカフェオレをビタ押しする。こういうとき、意味もなく親指でネジってしまうのは、ジャグラー中毒者の末期症状だろうか。

駅のホームで電車を待っているときにも同じようなことがある。『◎電車がきます』という電光掲示板がパッと点灯すると、心のなかで「あ、ペカった」とつぶやいてしまう。全国のジャグラー打ちならば同意してくれるだろうが、今まで口にしたことは無い。

そんな愚にもつかないことを考えながら、私は4本の缶を赤ん坊を抱っこでもするように胸に抱え、再び『巨人の星』のシマを目指した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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