六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編154】星飛雄馬、炎を目に宿す

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「木部、ほらよ」

胸に抱えたホットカフェオレの1本を、木部の頬に当てるように差し出した。木部は一瞬驚いて身体をのけ反らせたが、犯人の正体を見るや頬をゆるめ、台を指差した。

「さっきから演出がガンガン出てますよ。かなり熱いッスよ」

木部は受け取ったカフェオレを上下に振りながら言った。

「でも、128ゲーム以内だったら結構演出出るだろ。煽るだけ煽っといて128ゲームをスルーって展開、何度喰らったか数えきれないぜ」

私は木部の熱を冷ますような言葉を残し、裕子と五十嵐さんにカフェオレを手渡した。無言でプルタブを開ける裕子の隣で、五十嵐さんがごそごそとバッグから財布を取り出そうとしている。

「お金なんかいいの!ジュースくらい奢られときなさい!可愛くないねぇ」

裕子が五十嵐さんの肩を叩き、一喝した。その迫力に気圧されたのか、五十嵐さんは財布をバッグに戻し、申し訳無さそうに「ありがとうございます」と小さく会釈した。私は軽く手を上げ、問題が無いことを伝えた。

それにしても裕子の一喝はいささか理解に苦しむ。カフェオレを買ってきたのは私であり、代金の出処も私の財布だ。もちろん、私は最初から奢りのつもりだったし、お代を請求するつもりなど毛頭なかった。「お金なんかいい」というセリフは私が発してしかるべきものなのだ。まぁ五十嵐さんが申し訳なさそうに眉をハの字に曲げる表情は確かに可愛かったので、ここは許すことにしておく。

そんなことを脳裏に巡らせながら甘ったるいカフェオレを一口喉に流し込んだ時、裕子がこちらを向いて胸の前で木部の台を指差した。

――『俺は負けない!』

星飛雄馬の目に、再び炎が宿ったようだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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