六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編16】株式会社スロプロ

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「はぁ?何言ってんの、お前?」

私は眉根を寄せて木部に尋ねた。裕子も箸を咥えたまま固まっている。

「だから、起業するんスよ!この腐った現代社会をあざ笑うような会社にするんですよ!」

私と裕子は無言で顔を見合わせた。やはりアルコールはほどほどにすべきだ。今日は痛飲するつもりだったが、目の前の男の発言を聞いて、やはり二杯でやめておこうと思い直した。

「何の会社作るの?」

裕子が箸を咥えたまま、舌っ足らずな口調で尋ねた。まともな答えが返ってくるとは思えなかったが、私も一応耳を傾けた。

「何って、スロプロ会社ッスよ!」

一瞬、下あごが外れて落ちるかと思った。真面目に聞いてみようと思った私がバカだった。私が知っている以前の木部は、もっと聡明な男だったはずなのだが。酒の力で一時的におかしくなっているだけだと信じたい。

「だから、何なんだよ、スロプロ会社って……」

「だーかーら!三人でノリ打ちしましょうよ!ノリ打ち会社ッスよ!」

隣から裕子の大きなため息が聞こえた。きっと私と同じような感想を抱いているのだろう。私は冷めた軟骨の唐揚げを口に放り込んだ。歯ごたえがあるだけで、まったく旨味は感じられなかった。

「木部。百歩、いや百二十歩譲って三人でノリ打ちをしたとしよう。でも、それを会社にする意味ってなんかあんの?」

「カッコイイじゃないッスか!俺、社長ッスよ!ゆくゆくは東証一部上場ッスよ!世間のブラック起業どもをぶっ潰してやりましょうよ!」

少し頭がクラクラしてきた。アルコールのせいだろうか。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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