六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編165】ポケットを叩くとコインが0枚

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店員がコインジェットに向かってドル箱を傾けた。底の円盤が勢い良く回り出し、コインの嵩が減っていく。それに反比例して、順調にカウンターの数字が上がっていく。

「ありがとうございました!」

店員が深々とお辞儀して、うやうやしくレシートを差し出した。木部はそれを受け取ると、そこに印字された数字を一瞬だけ確認してから私の方に見せてきた。

『849枚』

私が頷くと、木部はそれを胸ポケットにしまい込んだ。

「余り24枚だな」

「これが鬱陶しいんスよねぇ。ポケットの中も探したんですけど、こういうときに限って一枚も入ってないんですよね」

「入ってたら入ってたで、危ないけどな。ゲーセンのコインだったりしたら、事務所に連れて行かれちゃうぞ」

「そうっスね」

木部は屈託なく笑った。これで一ヶ月と決めた木部のスロプー生活は終わりを告げた。『月20万プラス』という目標を立て、それを見事クリアしたことになる。初めの頃は絶対に無理だろうと高をくくっていたが、途中からの急成長には眼を見張るものがあった。今後、パチスロを取り巻く環境が激変しない限り、木部はプラス収支を続けていくだろう。それくらい安定した立ち回りだった。

だが、本当にこのまま私と同じようなスロット生活者の道を歩ませてしまっていいのだろうか。高卒で何の取り柄もない私と違い、木部は曲がりなりにも未来ある大学生だ。そんな風に私が憂いていることを知ってか知らずか、木部は隣で右肩を揉みしだいている。その顔は、目標を達成したことでの満足感に満ちあふれていた。

ようやく、裕子が五十嵐さんを連れて姿を見せた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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