六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編167】それぞれのヤメ時

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店員は『1525』と印字されたレシートを五十嵐さんに手渡した。それを黙って木部の顔の前に差し出した。木部はそれを確認すると、ほんの僅かだが頬の筋肉を緩めた。

「さっきの台の打ち方教えてよ」

五十嵐さんは身じろぎもせず、木部に迫った。木部はすっかり観念したような顔で、『巨人の星』のシマを親指で差した。五十嵐さんは私と裕子に小さく会釈をして、木部の二の腕あたりを掴んで巨人の星のシマへと歩いて行った。引っ張られるようにして連れて行かれる木部は、一瞬こちらを振り返り、右手を上げた。

二人の姿を見送ると、裕子がいきなり私の背中にパンチを浴びせてきた。

「痛いなぁ、なんだよ?」

「どうすんの、これから」

腕組みして口を尖らせるその姿は、わかりやすく怒りを表現しているが、その表情はこの結果に納得しているようにも見えた。

「とりあえず俺もジャグラーはヤメてコイン流しちゃうよ。どうせあの台は高設定じゃないだろうし」

「それから?」

「それから?のんびり野球観戦でもするよ、木部の台でね。今はもう五十嵐さんの台か」

「アタシは?」

「アナタは?好きにすればいいよ。設定『5』なんだから閉店まで打ち切ればいいじゃん。まだまだ出るよ、たぶん」

私は裕子の肩に手を回し、ジャグラーのシマへと向かった。自席に戻ると、私はすぐに台上のドル箱に手に取り、下皿のコインを移した。隣では裕子がゆっくりとゲームを消化し始めた。

「木部っち、本気でどうするのかな?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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