六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編17】無い内定の先にあるもの

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「木部、まぁその……スロプロ会社っていうのは冗談だとしてもさ……」

「冗談なんかじゃないッスよ!俺はいつだって本気ですよ!」

木部は、裁判官が静粛を求める時に木槌を振るうような格好で、右手の握りこぶしでテーブルをトンと叩いた。

「そもそも、うまくいくと思ってんの?」

「俺が社長やればどんな会社だってうまくいきますよ!お二人はスロプロなんですから、あとは俺が勝てるようになればいいだけじゃないッスか!」

木部はあごを突き出してニヤリと笑った。ずいぶんと酔いが回っているようだ。この短時間に四杯目に突入すれば無理もない。私は額に手をあて、揚げ出し豆腐を半分に割った。

「アタシたち、ノリ打ちやってないからね。今後もやるつもりないから」

不意に裕子が言い放った。おそらく、以前に阿久津さんと大神田さんがノリ打ちが原因で破局してしまったからであろう。その言葉は、木部への牽制と同時に、私に対しての意思表示でもあるように感じた。裕子の淡々とした口調に、木部は目を伏せて押し黙った。

「そんなわけのわからん会社の話よりもさ、お前、就職活動してるんだろ?順調だって言ってたじゃん」

私が尋ねると、木部は目を閉じてジョッキを口に運んだ。まるで、吐き出したい言葉を無理矢理ビールと一緒に飲み込んでいるようだった。

「就活って……いま十月だよ。四年生って言ってたよね?じゃあもう内定出てなきゃマズいでしょ?いくつ内定もらってるの?」

裕子が尋ねた。木部はジョッキを静かに置き、ビールの泡を上唇につけたまま、ゆっくりと口を開いた。

「俺は起業するからいいんです」

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  • 酒は、人を変える。酒は、人を変える。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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