六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編175】反故にされた、約束

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「先輩もキチンと働いたほうがいいと思いますよ」

別れ際、木部はそう言った。余計なお世話だ……と言い返そうと思ったが、今日はやめておくことにした。

「今日は本当にありがとうございました」

深々と頭を下げる五十嵐さんの肩を、裕子が嬉しそうにバンバンと叩いた。女同士の友情は男同士のそれよりも浅く薄っぺらいものだと耳にすることがあるが、この二人を見ていると意外とそうでもないのではないかと思った。

夜の街に消えていく木部と五十嵐さんの後ろ姿を見送る。二人の間にはまだ少しだけ隙間があった。だがこれもすぐに解決されるだろう。二人に手を振る裕子に顔を向けた。

「どこかでメシでも食べて帰るか」

「そうだね、お腹すいちゃった。何か温かいものがいいな、お鍋とか」

裕子はへそのあたりを擦った。

「じゃあ寄せ鍋のお店に行くか。ちょっと高いけど」

「大丈夫だよ、今日も勝ったんだし」

「あなたは勝ったかもしれないけど……」

そこまで言って、突然思い出した。

「そういえば今日ってノリ打ちだったよな!?五十嵐さんも一緒にさ。アレってどうなった!?」

「言っている意味がさっぱり理解できません」

裕子は両手の手のひらを上に向けて、さっさと歩き出してしまった。終わった後にノリ打ちを反故にするとは……。私はため息をついて裕子のあとを追った。

裕子の手を取り、風俗店の客引きをかき分けて進む。もう時刻は二十三時になろうというのに、この街の人々はいまだ活発に動いている。

「木部っち……就職できるかな?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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