六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編176】明日も、据え置き(終)

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「どうだろうね。俺は就職活動なんかしたことがないから全然わからないけど。木部ならなんとかなるだろ」

特に根拠はなかったが、そう答えた。裕子は「そうだよね」と頷いた。

木部の就職のために何かしてやれないだろうか。老婆心であるとわかっているが、少しだけ考えてみた。だが、無職の私にそんな力もコネもあるわけがないし、その役目はきっと五十嵐さんが担ってくれるだろうと思い、考えることをやめた。

「明日はどうすんの?据え置き狙い?」

裕子がこちらを見上げて言った。

「もちろん。『トヨタ』の店長ならバレバレでも据え置きしてくるだろ。明日も早起きしなきゃだな」

冬は朝起きるのが辛い上に、開店前の並びも厳しくなる。そのことを思うと少しだけ憂鬱な気分になり、頭を掻きむしった。それを見た裕子は、口元に手をあてて笑いながら言った。

「ブラック企業勤めは大変だね」

雀荘の角を曲がると、寄せ鍋屋の看板が見えた。窓からは白い湯気が立ち上っている。近づいてみると、看板の脇に「アルバイト募集中」の文字があった。

ふと、私と裕子が寄せ鍋屋で働いているところを想像してみた。なぜか二人ともミスばかりしているシーンが脳裏をよぎる。お互い、とても勤まりそうにない。

私は白い湯気とともに妄想を振り払い、寄せ鍋屋の暖簾をくぐった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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