六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編20】頑張りたまえ!

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「じゃあどうすれば弟子にしてくれんですか!?」

「だからしないって言ってるだろ!」

「そんなのオカシイですよ!こういう時は『この試練を乗り越えることができたら弟子にしてやろう』とかいう展開になるもんですよ!」

「そうだそうだー!」

「なんなんだよ、お前たちは……」

私が呆れ返っていると、店員が生中を運んできた。普段はビールはあまり飲まないのだが、今日は酔うために飲むと決めた。裕子の前には甘ったるそうなチョコレートパフェが置かれた。もうそんなものを食べるのか。それにしても、なぜ急に木部と裕子は意気投合してしまったのだろうか。はじめは裕子が木部に対して引き気味だったというのに。それもこれも全て酒の魔力だということにすべく、私はビールを一気に胃の中へと流し込んだ。

「じゃあわかりました!先輩、最低でも月に二十万くらいは勝ってるって言ってましたよね?」

私は何も言わず、ジョッキ越しに木部を見た。

「だから俺、明日から一人でスロット打ちます。そして、明日からの一ヶ月間で二十万以上のプラスを叩き出せたら弟子にしてくださいよ!」

木部はテーブルから身を乗り出して私に迫った。支離滅裂、ここに極まれりだ。私はゆっくりとジョッキを置いた。

「木部……。仮に月二十万稼げたとしよう。それを達成できたってことは、すでに十分プロレベルだろ?弟子になる意味ないじゃん」

木部は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で「あっ」と漏らし、ぽかんと口を開けて固まってしまった。聡明だった昔の木部はもういない。だが、この馬鹿な発言も全て酒のせいだ。こんなヤツでも良いヤツであることは間違いない。こんな木部をなんとか真っ当に就職させてやれないものかと思案を巡らせ始めたとき、隣からまたしてもあらぬ発言が飛び出した。

「よろしい!その条件でいいだろう!頑張りたまえ!」

裕子が手刀を額に当て、木部に向かって敬礼した。その頬は真っ赤に染まっていた。その発言を聞いて、木部は背筋をピンと伸ばして敬礼で応えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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