六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編21】もう、可愛くない

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「昨日のこと、怒ってる?」

裕子はテーブルの上に置いた鏡の前で髪を乾かしながら言った。

「別に怒ってないけど……」

私はベッドから身体を起こした。昨日は久しぶりに深くまで呑んでしまった。体内に残ったアルコールが後頭部に溜まって三次会を繰り広げているのか、頭がぐらぐらして気持ちが悪い。

「はい、これ飲んで」

裕子は冷蔵庫からスポーツドリンクを持ってきてくれた。二日酔いの身体に染み渡る。テレビでは『こたえてちょーだい!』で川合俊一が視聴者からのお便りを読んでいるところだった。もはやこの人が元バレーボール選手だったということを知らない人の方が多いのではないだろうか。

「なんか、携帯鳴ってたよ。メールだと思うけど」

「あ、そう……」

私はペットボトルを持ったまま動かなかった。

「……見ないの?携帯。たぶん木部っちからだよ。今日からやるって言ってたんだから」

いつの間にか裕子が木部のことを『木部っち』と呼ぶようになっている。確か昨夜からそうなっていたような気がするが、定かではない。

「木部だから見たくないんだよ」

「なんでよ?可愛い後輩くんだったんじゃないの?」

「もう可愛くない……」

私はベッドへとだらしなく倒れこんだ。枕に頭をうずめると、頭痛が和らいだ。と、次の瞬間、私の目の前に携帯電話が飛んできた。携帯はそのままマットレスで跳ね、私の鼻先をかすめて枕の上に不時着した。

「あっぶね!」

「大丈夫だよ、それくらいで壊れたりしないから」

「そっちじゃないだろ!」

「だから、早く携帯見なよ」

裕子はドライヤーのコードをくるくると本体に巻きつけて鏡を閉じた。私はしぶしぶ携帯電話を開いた。同一人物から三通もメールが届いていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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