六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編25】ダメな店じゃなかったの?

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「はいよ」

裕子がスパゲッティを作ってくれた。といっても、麺を茹でてレトルトのたらこソースと刻み海苔をかけただけの代物だったが、文句などあろうはずもない。私は「いただきます」と両手を合わせた。

「今日はどうするの?いつもみたいにまずは池袋に行って、良さげな台がなければ散歩がてらストック機のオイシイとこ拾いですか?」

「うーん、そうだなぁ……」

私はスパゲッティを頬張りながら、適当な相槌を打った。私好みの固めに麺を茹でてくれていて、なかなかの美味だった。

「今日は新宿に行こうか」

「なんで?」

「いや、なんとなく」

「木部っちのこと、気になるんでしょ?」

思わずむせ返った。慌てて水を飲む。

「別にそういうわけじゃないよ。確か今日は新宿の『アリババ』が月イチイベントだからさ……」

「じゃあなんでそんなに慌ててんの?」

「……海苔が喉に引っかかっただけだよ」

裕子は「ふーん」とだけ言い、クローゼットの前に立ち、着替えの服を選び始めた。私は何も言わず一心不乱にスパゲッティをかき込んだ。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

私が両手を合わせると、裕子は空いた皿を流し台へと運んでくれた。食器を洗う水道の音に合わせて、裕子が尋ねてきた。

「でも、あのお店、正吾がダメだって言ってたとこだよね?本当にいいの?」

私は「んー」と小さくつぶやいて誤魔化した。ダメだと言っていた店に行って良いわけがない。私はグラスに残った水を飲み干し、それをキッチンにいる裕子へと手渡した。

「今日は先に新宿に行こうか」

私がそう言うと、裕子は目線を合わせずに眉を上げて了解してくれた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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