六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編35】なんすか、『5枚手持ち』って

←BACK【師弟編34】さっきの負けも取り返しますよ!

店の中は寒いくらいに冷房が効いていた。それに呼応するかのように、店の状況も寒々しいものだった。客の数は両手で数えられる程度。この店で勝ち負けを意識しろという方が無理だ。

とりあえず『設定変更判別』の手順だけを教えることにして、ジャグラーのシマへ向かった。ほぼ全ての台が0ゲームという状況は、今日に限っては喜ばしいことなのだが、それにしても気が重い。私を真ん中にして、左隣に裕子、右隣に木部という配置で腰を下ろした。

「まず、コインを借りる」

「わかってますよ、そんなこと」

……。いつからこんなに可愛くない後輩になってしまったのか。隣から裕子が私の肩を叩いて私たちのやりとりを笑っている。

「次に、コインを32枚投入する。ここで注意するのは、クレジット表示が『32』って意味じゃないってことな。クレジットは『29』な」

店内で鳴く閑古鳥の鳴き声の代わりに、三人のコイン投入音がうるさいくらいに鳴り響く。遠くのほうで店員が訝しげな表情でこちらを見ている。

「よし、『29』になったな。次に、このまま1ゲームだけ消化する」

三人同時にレバーを叩く。小役が揃うことも、ましてやGOGO!ランプが点灯することもなく、静かにバラケ目が停止した。

「じゃあ次。コインを5枚手に持つ。『5枚手持ち』ってやつだな」

私は下皿から5枚のコインを左手に持ち、二人に見せた。

「ここからが意味わからんッスよ。何なんスか、手持ちって?」

木部の顔が不安に歪んだ。

→NEXT【師弟編36】ちなみにそれ、マスカットな。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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