六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編48】「収支はどうなの?」

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「木部っち、いないね」

三階へと昇るエスカレーターで、裕子が私の耳元でつぶやいた。この『極楽園』は、七階建ての大きなビルの一階から三階までをスロットのみで営業していた。一階と二階の全てのシマを練り歩いてみたが、木部の姿は見当たらなかった。

「メールしてから来ればよかったかもな」

私が答えると、裕子は小さく頷いた。

三階はジャグラーやニューパルなどのノーマルタイプと、一部の爆裂AT機、そして若干マイナーな機種が取り揃えられているフロアになっていた。私たちはとりあえずノーマルタイプのシマを一回りして、その先にあるAT機のシマへと足を向けた。

すると、『サラリーマン金太郎』のシマのカド台に見慣れた横顔が見えた。木部だ。木部は下皿に放り込んだ長財布から千円札を取り出し、コインサンドに投入しようとしていたところだった。

「よう、どうよ?」

私が肩を叩くと、木部は一瞬だけ訝しげな表情を浮かべたが、それが自分の師匠――もしくは師匠の彼氏――だと気がつくと、すぐに頬をゆるめた。

「先輩じゃないッスか!ラッパーみたいな挨拶ッスね」

「うるさいわ。調子はどうよ?」

「ぼちぼちって感じです。なんすか、先輩たちもこの店に打ちに来たんですか?」

木部はそう言いながら、コインサンドから吐き出されたコインを下皿へと移し替えた。

「いや、そういうわけでもないんだけどな……」

「木部っちの陣中見舞いに来たんだよ!師匠として弟子の調子が気になってな!」

裕子が私の背中越しに顔をのぞかせた。木部は笑いながら親指を立てて裕子に答えた。

「でさ……。お前、スロット生活始めてから二週間くらい経ったよな?収支はどうなの?」

コインを台に投入しようとしていた木部の右手が、動きを止めた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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