六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編49】スロッターの『チャラ』は、ほとんど『負け』

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私の問いに、木部はあからさまに顔を歪めていた。

「そう……ッスねー、最初の方は調子良かったんですけど……最近ヒキが弱くて……。だいたいチャラくらいじゃないッスかね?」

木部は私から視線を外してコインを台に投入し、レバーを叩いた。液晶画面には腕組みをした矢島金太郎が身じろぎもせずにこちらを睨みつけている。

「だいたい……ってお前、収支記録してないの?」

「してますよ、一応」

真っ直ぐリールだけを見つめて木部は答えた。往々にして、スロッターの言う『だいたいチャラ』は『負け』を意味する。木部のその態度からも、おそらく収支はマイナスになってしまっているのだろう。台上に設置されたデータ表示機に目をやると、まだロクにボーナスもATも引いていなかった。スランプグラフも順調に滑り台を描いている。

「お前……まだ打つの?」

「そうッスね。もうちょい頑張ってみます。先輩たちは打たないんですか?」

「今、一階から空き台全部見て回ったけど、良さそうな台は空いてなかったからね。もうひと回りしてダメだったら帰るわ。それにしても、このホールいい感じに出てるな。俺らも今度から通うことにするわ。教えてくれてありがとう」

私は木部の肩を軽く叩いて礼を言うと、裕子の手を取ってきびすを返した。念のためジャグラーのシマをくまなくチェックしたが、やはり良さそうな空き台は無かった。仕方なく私たちは、エスカレーターで二階を目指して降り始めた。

その時、反対側のエスカレーターで三階へと上がってくる、黒髪の女性が目に入った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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