六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編53】約20枚の損失

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「ちょっ……とりあえず、これ消化するまで待ってもらってくれるかな」

私はビッグボーナスのけたたましいBGMが鳴り続ける自分の台を指差して、裕子とボブカットの女性の顔を見やった。

「早くしてね」

裕子は憮然とした表情で言った。私はリプレイハズシもせずに慌てて順押しでボーナスを消化した。理論的には約20枚ほど損をしてしまった計算だ。だが、背後からの二つの圧力を考えれば、それくらい安いものだ。

ボーナスを消化し終えると、私は裕子に耳打ちした。

「あの女の人、ダレ?知ってる?」

「だから知らないって言ったじゃん!正吾の知り合いなんじゃないの?」

裕子が耳元で語気を荒らげた。私は眉をひそめて顔の前で手刀を振り、あらためてボブカットの女性を見た。

その女性は、濃紺のビジネススーツに身を包み、首元からは白いブラウスの襟が大きく張り出していた。足元はローヒールのパンプス。肩から少し大きめのビジネスバッグをぶら下げていた。それはまさに新人OLといった風貌で、とてもパチスロを打ちにここへ来たとは思えなかった。

私は女性に歩み寄り、軽く会釈をすると、その女性も会釈を返してくれた。顔を上げるときに髪を耳にかける仕草が、得も言われぬ色気を醸し出していた。

「ど……どうも」

私が恐る恐る言うと、その女性はおもむろに私の耳元に顔を近づけてきた。

「ここはうるさいので、外でお話させていただけませんか?」

私は小刻みに何度も頷いた。ふと隣を見ると、裕子の眉間には深い縦ジワが三本ほど刻まれていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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