六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編56】無職なんですよね?

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ボブカットの中の瞳は、冗談を言っているような雰囲気は微塵もなかった。

「ど、どういう意味ですか?」

私が尋ねると、ボブカットはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

「私、木部聖人さんの大学の同期生の五十嵐みゆと申します。木部さんがおっしゃっている『先輩』というのは、お二人のことで間違いないでしょうか?」

その丁寧過ぎる口調に、私はいささか面食らった。

「はぁ……確かに木部は僕のことを『先輩』と呼びますが、ただ単にバイト先の先輩だったというだけなので別の人を指しているかもしれませんよ。ちなみに僕は長崎正吾、こっちは森裕子です」

私が答えると、ボブカットの女性――五十嵐みゆは斜め上に視線をやって思考を巡らせているようだった。そしてすぐに視線をこちらに戻した。

「お二人は……失礼ですが……お仕事をされていないんですか?」

不躾ともいえる問いかけではあったが、その丁寧な口調と物腰で言われてしまうと答えないわけにもいかない。

「えぇ……まぁそうですね」

「それで、パチンコで稼いだお金で生活してらっしゃるんですよね?」

「正確にはパチスロですけど、まぁそういうことです」

そう言うと、五十嵐さんは口を真一文字に閉じて小さく二三度頷いた。

「それならば、やはり木部さんがおっしゃっている『先輩』というのはお二人のことで間違いありません。お二人にあらためてお願いがあります」

五十嵐さんはバッグの肩紐をグッと握り直し、口を開いた。

「これ以上、木部さんに近づかないでください」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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