六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編58】「資格が無いんです」

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裕子は少し背伸びをするようにして、顎を突き出した。

「さっきから好き勝手言ってるけどさ、木部っちは自分の意志でスロット打ってるんだよ。別にアタシたちが木部っちの財布から抜いた千円札を勝手にコインに変えてるワケじゃないんだよ?それなのに、なんでアタシたちが責められなきゃいけないわけ?」

思わぬ方向から反論を喰らって驚いたのか、五十嵐さんは顔色を失った。

「あと、アタシたちは本当にスロットの稼ぎで生活してるからね。アナタみたいなお嬢様には信じられないかもしれないけどさ」

そう言って裕子はプイッと顔を背けた。その声は、かすかに震えていた。五十嵐さんは口の中でギリギリと歯を食いしばっているようだった。

「いや……まぁ裕子の言ってることもわかるし、五十嵐さんの言っていることもわかりました。別に僕らは木部をそそのかしたつもりはないですけど、結果としてそういう状況になっているのは事実ですし……」

そこまで言うと、裕子が私の顔を睨みつけてきた。私は裕子をたしなめるように腰のあたりをポンと叩いた。

「ただ……五十嵐さん。どうして木部本人に言ってあげないんですか?スロットなんかやってる場合じゃないだろ?って」

私の言葉に、五十嵐さんは視線を落とした。三人の沈黙は渋谷の雑踏に飲み込まれた。

「アタシには……何も言う資格が無いみたいなんです」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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