六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編68】ヤメます……たぶん

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「なんすかそれ、イヤっすよ」

「なんだよ!ノリ悪いなぁ!」

「ノリとか以前に、ビッグの方が確率高いんだから、先輩の方がメチャクチャ有利じゃないですか」

木部は私の台を指差しながら、鼻を鳴らすように言った。確かにその通りだ。もちろん私もそれを分かったうえで言ったのだが……。さすが、私の弟子といったところだ。それなら仕方ないとあきらめ、ストップボタンに手をかけた時、木部の口から思わぬ発言が飛び出してきた。

「でも……いいッスよ。やりましょうか」

ストップボタンを押す寸前でギリギリ手が止まった。

「木部っち、いいの?」

驚いた裕子が尋ねる。

「いいッスよ、別に。もしビッグだったら、スロットヤメます」

あまりにもあっさりとした宣言に面食らいながらも、私は木部の気が変わらない内にと思い、リールへと目を戻した。

「よし、じゃあ決まりだな。フラグ判別なんてケチな真似はしないぞ。ピタッと7を揃えてやるよ」

私は左リールの赤い7を探し出し、ストップボタンを押した。上段に7が停止した。次に中リールを狙うと、中段に7が停止した。そして、右リール。二つある7からひとつに狙いを定め、いつもより少しだけ力を込めてストップボタンを押した。

――おかしい。

鳴り響くハズのファンファーレが聞こえてこない。本来ならば7が停止していなければならない右リール下段には、なにやら果物が停止している。なぜだ。

私の視界の端には、顔を伏せて肩を震わせる二人の姿があった。笑いたければ笑えばいいさ。

「せ……せんぱい……」

「ヒキ弱ぁぁぁぁ!」

「うっさい!」

手で口を覆って笑い続ける二人をよそに、私はBARを揃えてレギュラーボーナスを消化した。

「あーあ、レギュラーボーナス嬉しいなー!」

ヤケクソ気味の私に、落ち着きを取り戻した木部が言った。

「あと10日でスロプー生活がちょうど一ヶ月なんです。その時までにプラス二十万に到達したら、続けます」

「到達しなかったら?」

「ヤメます……たぶん」

木部は口の端を上げてニヤリと笑った。私は自分のヒキの弱さを呪った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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