六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編72】ヒキが強くなる食べ物

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案の定、としか言い様がない。閉店まで連チャンさせるぞと意気込んだATは、得てして連チャンしないものだ。8割程度が満たされたドル箱を台上に乗せようとしている裕子に声を掛けた。

「やっぱり終わっちゃったね」

「『やっぱり』って何よ!」

裕子は私の顔を見るなり、不満気に言った。

「そんなに怒るなよ、また引けるさ。それよりメシ食べに行こう」

私は近くにいた店員に食事休憩を取る旨を伝え、裕子を連れてエスカレーターに向かった。三階から二階、二階から一階へと降りていく途中、手すりにもたれかかりながら後ろにいる裕子の顔を見上げた。

「何食べようか?」

私が尋ねると、裕子はあごに手をあてて考えるようなポーズを取った。

「そうねー、最近家でもパスタばっかり食べてるからなぁ……。ヒキが強くなる食べ物ってなんだろ?」

「ひき肉じゃない?コロッケでも喰う?」

「ダメだよ!それだと『ヒキにくく』なっちゃうじゃん!そうだなぁ……あっ!」

突然、裕子が目を大きく見開いた。私が「どうした?」と尋ねても微動だにしない。裕子はエスカレーターの行き着く先を見据えたまま、あごに当てていた手でゆっくりとそちらの方を指差した。

裕子の指差す方に目を向けると、ボブカットの女性――五十嵐みゆさんがちょうどエスカレーターに乗って二階に上がろうとしているところたった。五十嵐さんも裕子とまったく同じポーズでこちらを指差して、目を丸くしていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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